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“トゥアナオ”。異国情緒あふれるこの響き。タイと周辺エリアで納豆を表す言葉である。納豆は日本固有と思われがちだが、実はヒマラヤ〜日本〜ジャワ島を結ぶ大三角地帯に共通する伝統食。その一角であるタイ北部では、粒状から挽き割り状、乾燥させた煎餅状まで種類も豊富。そのまま食べるほか、炒め物や煮込み、スープの旨味を担う発酵調味料としても食卓の口福を担ってきた。

そんなトゥアナオを使う料理の一つが「カオソーイ」。ゆでた小麦麺と揚げ麺の２種盛りに、ココナッツミルク入りのまろやかなカレースープを注いだユニークな麺料理だ。味わえば、食感の楽しさやスパイス感のある風味に加え、深く濃厚な旨味に陶然となる。

北部の名物として知られるが、ルーツは19世紀以降、中国雲南省からもたらされたものだとか。それが昔ながらの地域の味と交じり合い、この国独自の美味に生まれ変わった。伝統と他国の影響が融け合う、タイ食文化の奥深さが詰まった一品。近年は全国的に愛され、観光客にも人気。この料理の原型を最初に伝えた先人たちも、一口食べればきっと笑顔になったことだろう。

さて、奥深いと言えば侮れないのがこの国のパン文化。特に「カノムパン」と呼ばれる食パンはポピュラーで、街を歩けばあちこちの屋台やカフェでクリームやジャムを塗ったトーストに出合える。シンプルでいて味わいは多彩、店ごとの個性もある。人気店は常に大繁盛だ。

朝食も「カノムパンとコーヒーが好き」という人も多く、早朝から家族と店で楽しんだり、大量に買って持ち帰る姿をよく見かける。微笑みの国・タイが最も笑顔に包まれる時間──南国の光の中で食べるその朝食は、甘く香り高く、そしておいしいものが大好きな人々が育んできた幸福の味がした。